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東京高等裁判所 昭和52年(ラ)321号 決定 1977年5月31日

抗告人 鈴木利幸

右抗告人から、抗告人を原告とし今登を被告とする東京地方裁判所昭和五二年(ワ)第九九六号損害賠償等請求事件につき同裁判所が昭和五二年四月一一日なした受命裁判官飯田敏彦の昭和五二年三月一六日付釈明命令に対する異議却下決定及び同事件につきさきにした準備手続に付する旨の決定を取り消す決定に対して、各抗告の提起があったので、当裁判所は、次のように決定する。

主文

本件各抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人が本件各抗告をもって不服を申し立てる原決定のうち、(1)受命裁判官飯田敏彦の昭和五二年三月一六日付釈明命令に対する抗告人の異議に対する却下決定は、前記訴訟事件における準備手続をする裁判官として指定された同受命裁判官が民事訴訟法二五六条の規定により準用される同法一二八条の規定による釈明を命じた処置に対し抗告人において異議を述べたので受訴裁判所である原裁判所が同法一二九条の規定により決定をもってその異議につき裁判をしたもので、この裁判は受命裁判官の裁判に対する異議についての裁判(民事訴訟法四一二条参照。)ではなく、受命裁判官の処置に対する異議についての裁判であり、このような裁判について特に不服の申立てを許した規定はなく、終局判決前の裁判として終局判決に対し上訴を提起したうえ、上訴裁判所の判断を受けるにとどまり(同法三六二条三九六条参照。)、同裁判に対しては独立して抗告を申し立てることはできないし、(2)準備手続に付する旨の決定を取り消す決定は、受訴裁判所が自由な裁量により職権でなされる裁判であり、訴訟当事者は準備手続に付する旨の決定を求めたり、これを取り消す決定を求める申立権を有しないから、「訴訟手続ニ関スル申立ヲ却下シタル決定」(同法四一〇条)に該当しないし、そのほか右の裁判につき抗告をもって不服を申し立てることを認めた規定もないので、同裁判に対し抗告をもって不服を申し立てることはできない。したがって、本件各抗告は不適法であって、その欠缺は補正することはできないから、これが却下を免がれない。

よって、本件各抗告を却下し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のように決定する。

(裁判長裁判官 菅野啓蔵 裁判官 舘忠彦 高林克巳)

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